Web×IoT メイカーズチャレンジ 2020-21 in 徳島 開催報告
学生や若手エンジニアを対象とした IoT システム開発のスキルアップイベント「Web×IoT メイカーズチャレンジ 2020-21 in 徳島」が 2020 年 10 月 - 11 月にオンライン形式にて開催された。JavaScript や HTML といった Web 技術を使ったセンサーやモーターの制御を 2 日間のハンズオン形式の講習会で実践的に学び、その後、約 5 週間の準備期間を経て、実際に IoT デバイスの作品づくりに挑戦する「ハッカソン」が行われ、5 チームが作品制作に励み最優秀賞を競い合った。
ハンズオン講習会
『Web×IoT メイカーズチャレンジ 2020 - 21 in 徳島のハンズオン講習会』を 2020 年 10 月 24 日 - 25 日の 2 日間にかけて開催した。開催地域初の取り組みとなる参加者全員がリアルタイムに参加する完全オンライン講習で開催された。講師を含むイベントスタッフとイベントの参加者が全国各地の自宅等から参加し、オンライン開催だが同一会場での講習会さながらの臨場感があった。
総務省 四国総合通信局 電気通信事業課 情報通信連携推進官 上席コンテンツ流通促進官 宮岡 裕昭 氏の挨拶と徳島大学 情報センター/デザイン型 AI 教育研究センター 助教 谷岡 広樹 氏のオリエンテーションからスタートし、谷岡 広樹 氏による「IoT/電波に関する基礎知識」に関する講習が行われた。
谷岡 広樹 氏が講師の元、ハンズオン講習が行われ、参加者全員が個々に貸与された CHIRIMEN with micro:bit を使用し、開発環境のセットアップ、JavaScript によるハードウェアの制御といった実践学習が行われた。参加者は各自、様々なセンサー類を試すなど応用編にチャレンジしている姿も見られた。
2 日目は引き続きハンズオン講習の後、ハッカソンのチーム分けを行い、5 つに分かれたチームごとにアイデアワークショップを実施。参加者らは「地域をつなぐ」をテーマとし、課題解決のために必要となる意見やアイデアを出しあって、作品のイメージを大きく膨らませていた。コロナ禍の生活様式や人との関わり方の変化にも視野を広げた意見交換が繰り広げられていた。各チームのハッカソンに向けた発表により、制作される作品に期待が高まるアイデアワークショップとなった。2 日間にわたって行われたハンズオン講習会は大変有意義な時間となり、約 5 週間後に実施予定のハッカソンに向けて、各チームの挑戦が幕を開けた。
また参加者は IoT とは?という概念を共通認識し、その上で電波・無線などの有効活用についての知識を習得するため、ハッカソンまでの準備期間で公開された教材をオンデマンド形式で学習している。
ハッカソン
ハンズオン講習会から約 5 週間後、2020 年 11 月 28 日 - 29 日の 2 日間でハッカソンを開催した。ハンズオン講習会同様にオンラインで行われたハッカソンは、5 チームにより出し合ってきたアイデアの集大成として、作品制作に取り組んだ。
材料費は上限税込 5,000 円の範囲内で主催者負担。準備期間中チームごとに機材選定・調達・進捗等確認の Web ミーティングを行っていた。短い制作時間の中、機器の故障といったアクシデントにも奮闘、「地域をつなぐ」を作品のテーマとしてオンライン開催の徳島地域独自の視点から課題や魅力を探し出し、作品制作が進められた。
参加者の補助としてハードウェアやソフトウェアなど各分野のエキスパートがメンターとして参加。各チームのメンバーにアドバイスを行い、制作に深く携わっていた。会場スタッフを含め参加者全員が改めて徳島や参加者が住む地域とのつながりに目を向け、新たな魅力発見や課題解決の方法を探る「オンラインイベントならでは」の貴重な経験となった。
ハッカソン 2 日目は各チーム成果発表からスタート。前日までの準備期間では限られた時間の中でデバイスの構築や動作確認など作品審査に向け臨機応変に対応したチームもあった。
作品審査は徳島県 政策創造部地域創生局 Society 5.0 推進課 課長 佐光 正夫 氏、公益財団法人 徳島経済研究所 専務理事 荒木 光二郎 氏、KDDI シニアエキスパート 高木 悟 氏の 3 名により行われた。各チームからの 15 分程度の作品デモンストレーションと審査員からの質疑応答。審査員からは「地域をつなぐ」というテーマから地域の課題などをどのようにとらえ、作品の中で表現しているのかといった質問が寄せられ、参加者は制作の意図や作品への思いを述べていた。
厳正な審査の結果、「ER」の「PILLINK」が、最優秀賞を受賞した。自粛期間中の対面コミュニケーションの減少を課題ととらえ、遠隔では伝えにくい情報を伝えるアクティビティを再現。動物の体毛のようなふわふわな質感の毛糸で包んだデバイス。デバイスを通じて遠隔地でも生き物らしい温かみあるふれあいが再現できる。
表彰後には、進行の 谷岡 広樹 氏から、講評とねぎらいの言葉が贈られイベントの幕を閉じた。
参加チームおよび作品概要
Team A 曽根先生と愉快な仲間達
作品名:紙相撲 NEXT☆GENERATION
micro:bit をコントローラとして紙相撲を行う作品。コロナ禍のなか、実際に会うことが制限される中で、なにかしらコミュニケーションを誘発するものとして作成された。micro:bit の加速度センサーの値を利用して、振動モーターの on/off を制御することで力士を動かす。紙相撲にすることで、力士の作成は紙で作成可能。また操作も micro:bit を振るだけと簡単な操作のため、誰でも参加しやすく世代を越えて遊べる作品になっている。
Team B ER
作品名:PILLINK 【最優秀賞受賞作品】
動物の体毛のようなふわふわな質感の毛糸で包んだデバイスと入力デバイスがセット。ユーザーが入力デバイスに触れ人肌程度に温めると、離れた毛糸デバイスがその温度を再現しほんのりあたたかくなったり、ユーザーの心拍数を入力検知して拍動したりする。デバイスを通じて遠隔地でも生き物らしい温かみあるふれあいが再現できることを目指した。ヒトの体温を直接送信すると如何せん生々しいので、再現側デバイスを毛糸で包みかわいらしい見た目作りを意識した。自粛期間で対面コミュニケーションが減ったため、遠隔でも人間らしく、生き物らしく触れ合い、遠隔では伝えにくい情報を伝えたい (映像と音声以外) という思いから考えられた。
Team C AMABIE
作品名:どこでも体温ミマモル君
学校での体温測定時間の短縮や高齢者の見守りをテーマに作成。自分の好きな場所に作成した非接触型温度センサーを取り付け、顔を近づけるだけで自動で体温を測定し記録する。体温が一定値 (今回は 37.0°C) を超えるとオリジナルの LINEbot の「見守り体温チャンネル」が見守り主に体温データを転送するシステム。現在コロナウイルスが蔓延しており、その影響で学校では毎朝体温を記入した紙を提出しなければならないといった背景から作成。
Team D Hawks
作品名:見守りサービス
カーテンの開閉・トイレの使用をセンサーで検知し、micro:bit と Bluetooth 接続した PC または Raspberry Pi からサーバーに送信してデータを蓄積する。利用者はウェブページもしくはスマホアプリからグラフ化されたデータを見ることで、生活状況を見守ることができる。また、あらかじめ設定している危険な状態 (長期間動きがない等) になると LINEbot から通知が送られる。高齢者やひとり暮らしの若者はセルフケアが不十分になりやすい。そこでセンサーを用いて集めたデータにより生活状況を視覚化することで、家族や本人自身がケアしやすい環境ができると考えた。
Team E 害駆蓮-GAIKUREN
作品名:害虫駆除装置 (害駆装-GAIKUSOU)
部屋の中で害虫が発生することによって、安心して過ごすことができないため、それがストレスになっている (メンバーの多くが田舎に在住) と考え作成。害虫を視認した際に、害虫専用の何かしらの動作を行うことにより、その害虫の駆除機能が作動する (スマートインセクトキラー) また、害虫の発生場所と種類、発生数のデータを蓄積、閲覧することができ害虫速報としての Web サイトを構築。入り口として「害虫」を発端としているが、ゆくゆくは多様な昆虫に対応させる想定 (レアなチョウチョなど)。環境保全や町おこしを目標とした全国昆虫分布図へ派生させる予定 (ムカデ前線、蚊やハエ前線のように見える様にしたい)。