Web×IoT メイカーズチャレンジ 2020-21 in 信州 開催報告
学生や若手エンジニアを対象とした IoT システム開発のスキルアップイベント「Web×IoT メイカーズチャレンジ 2020-21 in 信州」が 2020 年 11 月、12 月に長野地区で開催された。今年度は、新型コロナウイルス感染症対策として、会場を塩尻会場、長野会場、上田会場の 3 か所に設置。オンラインで会場同士を結ぶ新たな形での開催となった。開催日数は 4 日間。前半は講習会形式で一人ひとりが基礎を学ぶ「ハンズオン講習会」、後半はチームを組んで IoT デバイス制作に挑戦する「ハッカソン」が行われた。6 チームが最優秀賞を目指して作品制作に取り組んだ。
ハンズオン講習会
ハンズオン講習会は、2020 年 11 月 7 日 (土) - 8 日 (日) の 2 日間開催された。定員を上回る 27 名が参加。高校生から社会人まで幅広い年齢層の参加者が集まり、意欲的に学習に取り組んだ。
初日は、主催者の信越総合通信局 情報通信部長 竹中 恵一 氏からの激励を頂いて開会した。次に、信州大学の不破 泰 教授による「IoT と電波の基礎知識」の講義が行われた。
Society 5.0 や 5G を題材にしたイメージビデオから始まった講義では、IoT 開発には欠かせない電波の活用事例や電波の特性などが丁寧に解説され、各会場の参加者は熱心に耳を傾けていた。
その後、一般社団法人 WebDINO Japan CTO の浅井 智也 氏によるハンズオン講習がスタート。コロナ禍での開催となる今回は、東京から遠隔参加した講師が、長野県内の 3 会場に向けて実習の進行を行い、各拠点のメンタースタッフが受講者のサポートを行った。
実習では、micro:bit という小型の教育用マイコンボードを使い、Web ブラウザーから JavaScript でセンサーや電子パーツを制御できる「CHIRIMEN」という IoT プロトタイピング環境を使用することから、各参加者には 1 台ずつ micro:bit と実習用のスターターキットが配布され、LED の点滅などの基本を一通り学んだ後、応用編として会場に用意された様々なセンサー類を使って、用意された作例 (Example コード) を試しながら、初日の講習が終了した。
2 日目も初日に続く形で、参加者がそれぞれ会場にあるセンサーやアクチュエーター (モーター) 類の動作を確認。人感センサー、温湿度・気圧センサー、サーボモーターなど 10 種類以上のセンサーから、好きなものを選び動かすなどして制御の作法やポイントなどを習得した。
午後は、参加者が 6 チームに別れて、12 月のハッカソンに向けた準備を開始。制作する作品の機能や実装方法などのプラン立てや、ハッカソンに向けてチーム内の役割分担などを確認した。
今回制作する作品のテーマは「With コロナ × IoT」。今回のハンズオン講習で学んだ知識を活かし、新型コロナウイルスの感染拡大が続く昨今の状況を乗り越えるための IoT ツールを制作すべく、アイデア出しから具体的なプランの検討までを実施。各チームとも熱心な議論が交わされた。最後に、ハッカソンに向けた作品テーマ検討の進捗が各チームから発表され、講師やメンターからのフィードバックが行われて、ハンズオン講習会が閉会した。
ハッカソン
ハッカソンは、2020 年 12 月 5 日 (土) - 6 日 (日) の 2 日間にわたり開催された。今回も会場は塩尻・長野・上田の 3 会場に分けて開催。6 チームに分かれた参加者が約 4 週間の準備期間を経て再集結した。参加者は、各チームに伴走するメンターや、WebDINO Japan の講師陣の力も借りながら、IoT デバイス制作に熱中した。
制作物の発表をオンラインで実施することとなったため、2 日目からは、発表用資料の準備をする姿も目立った。
2 日目の 15 時ころからは、各チームの制作物の発表と審査会を実施。審査員は、以下の 4 名の皆様に担当いただいた。
- 不破 泰 氏 (信州大学 工学部 教授)
- 大手 智之 氏 (株式会社アソビズム 代表取締役 CEO)
- 小澤 光興 氏 (塩尻市 企画政策部情報政策課長)
- 高木 悟 氏 (KDDI 株式会社 次世代運用推進本部 / WIMC 実行委員会 主査)
- 瀧田 佐登子 氏 (一般社団法人 WebDINO Japan 代表理事 / WIMC 実行委員会 副査)
3 会場にいる各チームがそれぞれ Zoom 経由で 5 分間の作品のプレゼンテーションやデモンストレーションを行い、審査員からの質疑応答に応じた。
審査の結果、最優秀賞は、塩尻会場から参加したチームマスクマン (A チーム) の「With コロナでソーシャルディスタンスを守ろうセット!!」が受賞した。また、審査員から高く評価された長野会場から参加したチーム JANBI (D チーム) の「COVIDiffuser コビディフューザー」と塩尻会場から参加したバードマンズ (B チーム) の「IoT 腕相撲システム」に特別賞が贈られた。
参加チームおよび作品概要
Team A チームマスクマン
作品名:With コロナでソーシャルディスタンスを守ろうセット!! 【最優秀賞受賞作品】
人とのソーシャルディスタンスを保つための IoT デバイス。人との距離が近いと、メガネ部の LED と振動モーターが自分に警告、スマートウォッチ (M5stack) にディスタンスを守れなかった回数などが記録・表示される。距離の判断は、人感センサー、距離センサー、サーモグラフィ等の各種センサーを活用。将来的には、日々の記録をクラウド上に保存し活用することも考えている。コロナ禍で普段身につけないといけないマスクを楽しく身に着けられるようにと考え始めたのが本作品づくり原点となった。
Team B ハードマンズ
作品名:IoT 腕相撲システム 【特別賞受賞作品】
コロナ禍ででも人と楽しくコミュニケーションをとりたい! という希望を満たすために作った、オンライン用腕相撲デバイス。圧力センサーを使って、双方の腕図もデバイスにかかる力を随時読み取り、デバイスの動きを制御する。エアシリンダーをつかったので、大人が目一杯力を入れても大丈夫。将来的には、腕相撲の結果をクラウド上に保存し、一人プレイもできるような仕組みに発展することを目指したい。
Team C しおしー
作品名:はこぶん☆彡
集合住宅や雑居ビルのような環境で、人と人が接触せずに宅配の荷物を受け渡すための配達システムのミニチュア版。荷物の配送時にアルコールスプレーを噴射する機能を備えている点もポイントとなっている。電車のおもちゃを改造し、4 台の micro:bit を使ってモノを運ぶ電車の制御、届ける駅の検出、アルコール液を散布する機能を実装した。DC モーター (電車の制御)、ホールセンサー (電車の位置検出)、サーボモーター (消毒液の散布)、圧力センサー (モノを電車に乗せたかを検出する) など活用した。
Team D JANBI
作品名:COVIDiffuser 【特別賞受賞作品】
居室内の除菌作業を支援するシステム。居室内に設置する監視カメラが部屋にいる人の数を監視し、除菌が必要な場合に配送ロボが除菌スプレーを部屋まで届ける。温度・湿度も監視し、除菌の判断をコンピューターが決めるので、人が何度も面倒な除菌をする必要がなくなる。除菌記録などを管理するスマホアプリも制作。シンプルで使いやすい UI にこだわった点もポイント。将来的には、無人部屋を感知して、自動で除菌作業を行うオートパイロットオプションの実装などにチャレンジしたい。
Team E K&K
作品名:3 密検出、自動回避システム
居室内の環境を監視し、必要に応じて定期的な窓の開閉、換気扇、エアコンの自動運転を行うシステム。監視カメラや各種センサーが、居室内の温度、湿度、人の数やマスク非装着者の数を監視し、危険度を判定する。危険度が高いほど窓の開閉頻度が高くなる。状況をモニタリングできる Web ページも作成した。学校授業や試験のときのコロナ対策について考えたことが、作品づくりのきっかけ。
Team F 小山ズ+α
作品名:汚部屋チクリン
コロナ禍在宅ワークが増えた結果、部屋が汚くなりがちだという課題を解決するためのアイテムを制作した。走行ロボットが部屋の状況を監視・汚れを計測して PC に計測結果を表示する。汚れの計測には、カメラ、照度センサー、温湿度センサー、距離センサーなどを活用した。自分自身が部屋の状況を監視する以外に、管理人が部屋の状況を監視することも発展系として活用が可能。
Team G 世界を救い隊
作品名:アルコールさせ台
アルコール消毒の励行を支援するアイテム。自作したペダル式アルコールスタンドに、人感センサーや重量センサーを設置。人を感知し、かつ重量センサーがアルコール噴霧を感知したら感謝の音を鳴らす。逆にアルコール噴霧を確認できない場合は警告を鳴らし、アルコール消毒を促す。コロナ禍で色んな場所にアルコール消毒が置かれたにも関わらず、利用していない人がいる点に着目して考案した。