Web×IoT メイカーズチャレンジ 2020-21 in 大垣 開催報告
学生や若手エンジニアを対象とした IoT システム開発のスキルアップイベント「Web×IoT メイカーズチャレンジ 2020-21 in 大垣」が 2020 年 11 月 - 12 月に岐阜県大垣市で開催された。micro:bit を用いた各種センサーの使い方と、Raspberry Pi と IFTTT を用いたセンサーとインターネット上のサービスとを連携する方法を、2 日間のハンズオン形式の講習会で実践的に学んだ。その後、3 週間の準備期間を経て、実際に IoT×Web のプロトタイプ作品制作に挑戦する「ハッカソン」が行われ、6 チームが作品制作に挑戦し、最優秀賞を競い合った。
ハンズオン講習会
2020 年 11 月 28 日 (土) 〜 29 日 (日) にかけ、Web×IoT メイカーズチャレンジ 2020-21 in 大垣のハンズオン講習会が、ソフトピアジャパン ドリーム・コアにて開催された。受講者数は 25 名で、高校生、専門学校生、大学生を中心とした参加者だった。
本講習会では、12 月に開催するハッカソンに向けた作品制作の前提となる IoT 開発のスキル習得を目的として、大きく分けて、無線技術の基礎知識を学ぶ座学講習、センサーや電子工作の基本、Web サービスとの連携を学ぶハンズオン、ハッカソンで制作するプロトタイプ作品のアイデアを決めるアイデア創出ワークショップを実施した。
初日、座学講習後が終わり、ハンズオン形式の技術講習会が始まった。今回の講習会参加者には、1 人 1 台 micro:bit と拡張ボード、microUSB ケーブルがプレゼントされた。
フリーランスの市野 昌宏氏から、まず Web 上においてノンコーディングでマイコンのプログラミングができる micro:bit 環境を用いて、IoT 技術に必要となる様々なセンサーの活用方法を学んだ。micro:bit 内蔵センサーとして、加速度センサー、磁気センサー (電子コンパス)、明るさセンサー、温度センサーを使って、じゃんけんゲームや角度当てゲーム、磁石による LED の明るさ変更等を制作した。また、micro:bit に拡張ボードを取り付け、人感センサーや超音波距離センサー等の外部センサーから値を取得する体験も行った。
次に、合同会社 4D Pocket の石郷 祐介氏から、micro:bit にワンボードコンピューター Raspberry Pi を繋いで、インターネットに接続する方法を学んだ。シリアル通信で、micro:bit からセンサーの値を Raspberry Pi に送信し、Raspberry Pi から IFTTT を経由して、Google スプレッドシートに値を書き込んだ。Raspberry Pi で動作する Python ソースコードは講師側が用意したが、後々ハッカソンで改良できるように、講習会の最後にコードの解説を行った。
2 日目のアイデア創出ワークショップでは、参加者の身の回りの課題を発見して、それを未来的な手法でどのように解決するかを考えるという流れで、制作するプロトタイプ作品のアイデアを固めていった。
日本総合ビジネス専門学校の市川 大祐氏がファシリテーターを担当し、まずはアイデアを絵にして共有するアイデアスケッチの描き方を学んだ。
次に、身の回りの課題を発見するために、参加者に平日と休日のタイムスケジュールを書き出して日々の生活を振り返りながら、そこから考えられる課題を付箋で書き出した。次に、それぞれの課題を持ち寄って、チーム内で話し合い、共感できる課題に絞った。絞り込んだ各課題を解決する手段を、各々で考え、アイデアスケッチという手法を用いてチーム内で共有した。課題とそれに対する解決策が出揃った状態で、今回の開発期間で制作できるアイデアをチーム内で決定した。
アイデアが決まったチームから、メンターと相談しながら、実現可能な実装方法の検討と電子パーツの選定作業を行った。
ハッカソン
3 週間の準備期間を経て、制作の追い込みとなるハッカソンは、古民家をリノベーションしたレンタルスペース ennoie ミドリバシで開催した。縁側や和室での開発は新鮮だったと意見が多く、くつろぎながら開発を進めている様子が見られた。
1 日目の冒頭に、各チームのアイデアを再度全体で共有し、作業をスタートした。メンターには、ハンズオン講習会で講師を担当した市野氏、石郷氏、市野氏の他、様々な技術に対応できる日本総合ビジネス専門学校の卒業生である青木 聖氏、佐藤 宏樹氏の 2 名が加わり、現役エンジニア陣が制作をサポートした。
会場の一室を、メンター部屋兼はんだ付け作業部屋とした。ソフトウェアだけではなく、ハードウェアも扱うハッカソンということもあり、はんだ付け作業部屋では、常にいずれかのチームがはんだ付けを行っていた。
1 日目は 20 時をイベント終了時刻としたが、ほとんどのチームが会場の閉場時間である 22 時まで残って作業していた。日中は暖かったが、夜になると、隙間風が寒く、運営側から参加者全員に懐炉を提供した。また、古民家の電源容量の限界から、2 度ほど停電が発生し、全体で節電を心がけた。
2 日目の夕方より、各チームの成果発表及び作品の審査が行われた。審査員は、岐阜協立大学 准教授の佐々木 喜一郎氏、Code for GIFU 代表の石井 哲治氏、NPO 法人 G-net の南田 修司氏の 3 氏が担当した。各チーム 5 分間のプレゼン・デモ発表を行い、その後、5分間の質疑応答を行った。
6 チームの発表後、審査員が、各チームの作品を、ソフトウェア・ハードウェアの実装力、アイデアの独創性・ユースケースの有用性、無線の活用度の観点から審査した。
審査終了後には、表彰式が開催され、最優秀賞作品には、チーム nuko の作品「I miz U」が選ばれた。また、全チーム作品の講評が、佐々木氏、石井氏、南田氏から伝えられた。
最後に、大垣運営委員会 主査の市川氏から、イベント全体の講評があった。
参加チームおよび作品概要
Team A A.lab
作品名:カメラによる冷蔵庫の内容物確認システム
外出先等で冷蔵庫内の状況を確認できるシステム。リードスイッチでドアの開閉を検知して閉めたときに冷蔵庫内をカメラで撮影という流れを Raspberry Pi 上で制御。撮影した画像を Raspberry Pi 経由で指定した時間にユーザーの LINE に対して通知する。
Team B WIKIC
作品名:もちべアゲリーター
モチベの低い人たちが、どうすればモチベが高くなるかをテーマにした。そこで、お互いのモチベを高め合うために、モチベを高めてくれるワニ型デバイスを、それぞれが玄関に置き、例えば A さんが出掛ければ B さんのワニが「A くんが出掛けたよ、B くんも出掛けてみる?」と話し、B さんが帰宅すれば「おかえりっ!お疲れ様」と応援してくれるような機能を搭載した。
Team C nuko
作品名:I miz U 【最優秀賞受賞作品】
飲食店で、水のピッチャーが席に置いていない場合、水を注いでもらうために、その都度店員を呼ばないといけない。本デバイスは、歪みゲージというセンサーでコップの重さを測定し、水の量を判定する。水やコップの有無を判定し、水が少なくなったとき、電光掲示板にテーブル番号を表示して店員に知らせる。
Team D ソフトピア共同研究室
作品名:家事管理システム「カジオー」
家族で家事をするときに作業の重複や忘れていることがある。家事の見える化をすることにより、家族内の家事内容を共有、把握、効率化しようと考えた。 IoT 機器が接続されている家電の始動と停止の情報を専用のスマホアプリで受け取ることができる。
Team E さかなかま
作品名:友錠
家の鍵の不便を改良するアイデア。 デバイスを持ってドアノブを握ることで鍵の開け閉めができるようになる。また、鍵の貸し借りはデバイスでデータとして渡せるので面倒な鍵の管理をなくすことができる。
Team F ikekou
作品名:study done
はじめに大切なものを箱に入れて鍵をかけてから勉強を始めます。ペンの先につけた加速度センサーを使って、勉強時間を計測します。一定時間勉強すると、何時間勉強したかを親に LINE で知らせ、箱の鍵が自動的に開きます。