Web×IoT メイカーズチャレンジ 2020-21 in 石川 開催報告
学生や若手エンジニアを対象とした IoT システム開発のスキルアップイベント「Web×IoT メイカーズチャレンジ 2020-21 in 石川」が 2020 年 11 月 - 12 月に北陸地域で開催された。新型コロナ感染症対策のため全過程がオンラインの実施となった。参加者は M5Stack (Core2) でセンサーを利用したデータ取得や、サーボモーターやフルカラー LED 等を利用した出力、M5Stack と Web との連携といった技術を実践的に学び、実際に IoT デバイスの作品づくりに挑戦する「ハッカソン」で 6 チームが作品制作に励み最優秀賞を競い合った。
ハンズオン講習会・アイデアワークショップ
11 月中旬、金沢工業大学の中沢教授による IoT 基礎知識に関する講習動画と、EdelWorks 代表の古川氏作成の M5Stack レクチャー教材がオンラインで案内され、参加者はそれぞれの都合に合わせて学習を進めた。各自の PC やインターネット環境の違いによってレクチャー通りに進行できないシーンもあったが、講師と参加者全員が参加するオンラインメッセージグループ上で忌憚なく質問を行い、講師らも適切にサポートすることができた。
11 月 23 日 (月・祝) はビデオ会議でイベントキックオフとアイデアワークショップが行われた。北陸大学の關谷准教授がファシテーターを勤め、午前中は自己紹介を兼ねてビデオ会議アプリやホワイトボード共有アプリの機能を練習する時間を設け、その後のディスカッションへの足並みをそろえた。
テーマとして身の回りの困った経験について自由に意見を交換した。参加者は新型コロナ関連に限定せず多様な意見を発言し、繰り返しメンバーを変えながら議論することで課題を深掘りして考えることができた。
最終的に各自最も興味が持てた課題テーマに集まり、3 〜 7 名からなる 6 チームが結成されハッカソン作品制作に向けてアイデア整理と検討が行われた。検討・準備はアイデアワークショップ後も各チームのオンライングループで行われ、3 週間後のハッカソンに臨んだ。
ハッカソン
12 月 12 日 (土) および 13 日 (日) の 2 日間にわたって、ビデオ会議でハッカソンが行われた。一部、少人数で学校内を借りて作業を行うチームも見られたが、ほとんどはオンラインのみで開発が進められた。チームメンバー同士の作業状況をリアルで確認できないため、様々なオンラインアプリを活用し、作業分担や情報共有を意識的に行なっていた。
準備期間からハッカソン当日にかけて金沢大学の秋田教授をはじめとする 4 名がメンターとして入り、チームのメッセージグループで質問や困りごとが発生しているときは積極的にサポートが行われた。
2 日目午後からはチームの作品発表と審査が行われた。審査員は石川県工業試験場 林氏、金沢美術工芸大学 安島教授、金沢エンジニアリングシステムズ 小林氏が務め、無線・ハンズオン知識の活用度やアイデアの独創性、ソフトウェア・ハードウェアの実装力の面から審査が行われた。
最優秀賞は、チーム F がらがらどんの「白やぎ黒やぎ DX」が受賞した。作品はオンラインでのコミュニケーションをテーマとし、通話相手の都合確認、話題の提供、ビデオオフでも相手の表情を読み取ることを可能とする多機能デバイスで、M5Stack の活用と実装力が評価された。
また、他 5 チームも M5Stack をよく理解し活用する作品を仕上げており、審査員の協議の結果すべてのチームに特別賞が贈られることになった。
講評ではアイデアへの評価や、プロダクトとしての評価・今後の展望が話され、参加者の糧となった様子だった。最後に主催として北陸総合通信局の傳田課長から参加者やスタッフへの感謝が述べられ、イベントの幕を閉じた。
参加チームおよび作品概要
Team A キコーデネート
作品名:キコーデネート
朝や外出前に、余裕をもって出かけられるようアシストするシステム。あらかじめ時間割や、天気・気温情報に合わせて必要な持ち物をユーザーが設定し、M5Stack のボタンを押すと、その日の曜日や OpenWeatherMap の天気予報情報に基づき設定された持ち物を MQTT から取得し、LINE にメッセージとして送信する。不安定な気候の地域で生活するうえで、学校の準備以外に天気に合わせた持ち物をチョイスする手間を軽減したいという思いから発想した。
Team B 快眠のすヽめ
作品名:快眠のすヽめ
眠たいのに眠れない、寝不足の悪循環を解決する装着型デバイス。デバイスを手首に取り付け、年齢・性別を入力すると心拍センサーが心拍数を計測する。心拍数が睡眠に適した値を超えている場合、複式呼吸のレクチャーを LINE に届けることができる。適した数値になると一定時間音楽が流れ α 波によるリラックスを促す。起床時には LINE へ一言メッセージが届く。幅広い年代を想定した設定画面、クラウドへ送信した心拍数の平均値を正常・異常か評価する機能、指に取り付けたサーボモーターで腹式呼吸のアシストを行うなど、幅広いサポートを実装。
Team C VS クマ
作品名:AI カメラによる熊の検出及び位置情報の通知
県内でクマの目撃・被害報告が増加しているため、未然に被害を防ぐシステムを開発。街中に設置した AI カメラでクマを検出し、M5Stack から曲を鳴らしてクマに忌避させたり、GPS 情報を Ambient に送り住民へクマの出没位置の情報を開示し注意を促す。出没位置は Ambient に蓄積してグラフとして表示することができる。カメラと M5Stack の設置は人がいる可能性が高い街灯下や農耕用電源がある場所を想定し、大量設置と電源確保を見込める。
Team D KOHETSU
作品名:どんとたっち
コロナ禍のためむやみに物に触らなくて済むようにしたい、管理が面倒なものをスマートにしたいをテーマにジェスチャー操作するデバイスを開発。ToF センサーで手の近づき具合を判別し、モーターを通して操作する。消毒液ポンプの場合は小さい動作なら液が少量しか出ないようにするなどのジェスチャーの調整を行った。また Google Apps Script やスプレッドシートへログを送信することでモノの状況を監視し、液の残量を推定したり利用頻度の統計を作成し活用できる。
Team E チーム E
作品名:れいぞうこのなか かんりシステム fridger
食品買い出しでの 2 度買いや物忘れを防ぎ、スムーズな献立作りを助けるため、冷蔵庫内の在庫を Web に登録・管理し、出先で確認できるシステム。会員登録でシステムを利用開始し、管理画面で在庫一覧を確認できるほか、通知ボタンからは Slack に賞味期限が近い在庫リストを送信できる。食品の登録方法はバーコード読み取りのほか、多様なパターンを想定してアイデアを練った。
Team F がらがらどん
作品名:白やぎ黒やぎ DX 【最優秀賞受賞作品】
コロナ禍で普及したオンラインコミュニケーションにおいて、相手の状況がわからない・話しかけるキッカケがない等の気まずさ解消を目的とする多機能デバイス。自分の都合設定機能は、M5Stack 本体の置き方を内部の加速度センサーで検知し通話可能・不可・不在の状態を示し、通話相手はノック機能でその状態を確認することができる。話題の提供機能では日付に基づく占い情報や、会話相手の現在地の天気を取得し表示する。表情送信機能では、M5StickV を使って嬉しい・悲しい等の表情を読み取り絵文字で表示、音声のみ通話でも様子を伺うことができる。