Web×IoT メイカーズチャレンジ 2020-21 in 茨城 開催報告
学生や若手エンジニアを対象とした IoT システム開発のスキルアップイベント「Web×IoT メイカーズチャレンジ 2020-21 in 茨城」が 2021 年 1 月 – 2 月に茨城県で開催された。JavaScript や HTML といった Web 技術を使ったセンサーやモーターの制御を 2 日間のハンズオン形式の講習会で実践的に学び、その後、4 週間の準備期間を経て、実際に IoT デバイスの作品づくに挑戦する「ハッカソン」が行われ、6 チームが作品制作に励み最優秀賞を競い合った。
ハンズオン講習会
ハンズオン講習会は、2021 年 1 月 30 日 (土) にチームごとに設定した会場をオンラインで繋ぎ開催された。高校生、高専生、専門学校生、大学生、社会人と 32 名の参加者が集まった。
講習会の冒頭は、主催者を代表して総務省関東総合通信局情報通信部情報通信連携推進課長の新井 篤史氏による挨拶から始まった。続いて、事務局よりイベント全体の流れの説明や、新型コロナウイルス対策の説明を行った。
「IoT の基礎や電波や無線通信に関する講習」については、新型コロナウイルス感染対策防止の一環で会の時間を短くするため、Web 上に学習動画をアップロードし、事前に学習してくるスタイルとした。事務局説明の後、早速、ハンズオン講習会のスタートとなった。
講師は、有限会社代表取締役の新堀 道信氏にお願いした。各参加者には 1 台ずつ開発環境である Raspberry Pi 4 と小型のモニターやキーボード、マウスを事前に送付した。講習は CHIRIMEN for Raspberry Pi のチュートリアルに沿って進められ、Web 技術を使用して LED を点滅させるサンプルプログラムを動かしたり、物理的なスイッチを使ってモーターを制御する方法を試したりと、各自自分のペースで学習を進めた。
今年度は各チームがそれぞれ別の会場から参加しており、進捗状況の報告や質問については Slack を活用して行った。進みが早いチームは、光センサーや距離センサー、といった様々なセンサーを試したり、複数のセンサーの組み合わせた使用などにも挑戦したりした。
続いて、ハッカソンに向けたオリエンテーションとして、ハッカソンに向けたタスクの確認、IoT の活用事例紹介を行った。その後、ハッカソンで制作する作品のテーマ決めのヒントとなるアイデアソンを実施。アイデアソンのファシリテーターは、ハンズオン講習に引き続き、有限会社代表取締役の新堀 道信 氏が担当。各チームアイデアを出し合い、制作物のイメージを膨らませていった。Slack や Zoom を活用し、講師・メンターからもアドバイスを行った。最後に、各チームが制作物イメージを発表し、ハンズオン講習会が終了した。
ハッカソン
2021 年 2 月 27 日 (土) – 28 日 (日) の両日、チームごとに設定した会場をオンラインで繋ぎハッカソンが開催された。21 名・6 チームが参加し、講習会で学んだ IoT の基礎知識・技能を活用した作品制作を行った。制作時間は初日と 2 日目の午前中。若者ならではのアイデアとプログラム技術を活かし、時間ギリギリまで作業に没頭した。
2 日目の午後には、3 名の審査員による審査が行われた。Zoom の画面共有やカメラをうまく活用し、各チーム 5 分間のプレゼン、5 分間の質疑応答が行われた。なお、審査項目は、「ソフトウェア、ハードウェアの実装力」「アイデアの独創性、ユースケースの有用性」「無線の活用度」の 3 項目であった。
各チームのプレゼンテーションが終わった後、審査員による審査会が別室で開かれた。各チームとも素晴らしい作品であったため、最優秀賞の選定は難航し、急遽審査員特別賞を設けることとなり、最優秀賞と審査員特別賞が選定された。審査結果は、審査員による講評の後に発表された。審査員特別賞はチーム「電子のたまご」が受賞した。副賞として「大洗アクワワールドのマスクケース」が贈呈された。
最優秀賞は、茨城工業高等専門学校生によるチーム「ほげ」が受賞した。審査員からは「ソフトウェア、ハードウェアの実装力」について高く評価された。また、同チームは、3 月 13 日に開催される「合同オンラインイベント (主催者)」に招待された。
参加チームおよび作品概要
Team A KLIS (ケーリス)
作品名:never 再配達
EC 需要が増大する中、再配達による宅配業者への負担が非常に大きく、社会問題となっていることや、利用者にとっても荷物がすぐに受け取れないといったデメリットも発生していることに着目し、再配達ゼロの実現を目指した「never 再配達」を開発した。重さセンサーや LINE Notify などを活用して、従来の宅配ボックスに、荷物が届いたことの通知機能や、持ち逃げ防止のアラーム (実装中) といった機能を加えた。
Team B 単発
作品名:卓上白杖
視覚障がい者の方が装着することで、指先と対象物の距離感を触れずに知覚できる IoT デバイスを制作した。対象物と指先の距離は、指先に取り付けた測距センサーで測り、知覚作用は振動センサーを用いて実現。手先や腕にラズパイを取り付けると邪魔になるため、手首に巻く BLE デバイスでラズパイと通信するようにした。
Team C mast20
作品名:Turin (チューリン)
スマホ端末から現在地情報を JavaScript で取得して最も近く、最も空きがある駐輪場を紹介するアプリを作成した。駐輪場における空き情報は自転車を停める箇所に置かれた距離センサーで判別し、距離センサーで取得した値がある値を下回ると、自転車を停めたと判断し、空き情報を保存しているサーバーにリクエストを送る。また、ある値を上回ると、自転車を出したと判断し、サーバーにリクエストを送る。これらの情報をアプリ上でリアルタイムに閲覧することが可能となる。
Team D みそにこみ university
作品名:テレダンス
コロナ禍により「外出規制による運動不足が引き起こす健康被害」と「ラウンドワンのような場所で友人と運動して遊ぶ機会の損失」という課題を解決すべく、見本のポーズをまねして運動ができる「テレポーズ」というゲームを作成した。具備した機能は、“手かざし検知機能”、“ポーズ類似度判定機能”、“ポーズの写真のアップロード機能”。ポーズの写真アップロード機能では、ポーズ類似度で良判定が出たものを Google ドライブにアップロードすることで、会う機会や話す機会が減っている友人との会話のきっかけとすることを企図した。
Team E 電子のたまご
作品名:バリバリ運ぶ バリキャリくん 【審査員特別賞】
仕事中に離席する時間を極力減らすことによる仕事の効率向上を目指し、「商品の自動配送・管理」と「購入商品の履歴管理」機能を持ったオフィス用移動自販機の制作を行った。Web ページから購入する商品を選択すると、ロボットが指定の場所まで届けてくれることを目指した。さらには、社員証などで購入者を認証し、誰がどこで何を購入したかたのデータをとることも目指した。
Team F ほげ
作品名:Non-Waiting BUS 【最優秀賞】
バスの運転席等にラズパイを設置するだけの簡単導入でバスが今どこにいるのかをスマホで確認、かつバスの現在地と実際の時刻表を比較して、最新の予測時刻表を作成・スマホで確認できるシステムを開発した。コロナ禍ということもあり、バスの現在地と予測時刻表に加え、そのバスの人口密度も確認できるようにした。バスに設置したラズパイがデータを取り、モバイルルーターを経由してサーバーに送信、サーバーにユーザーがアクセスして様々な情報を確認できる仕組みとなっている。