Web×IoT メイカーズチャレンジ 2019-20 in 沖縄 開催報告
学生や若手エンジニアを対象とした IoT システム開発のスキルアップイベント「Web×IoT メイカーズチャレンジ 2019-20 in 沖縄」が 2019 年 12 月 7 日 (土) - 8 日 (日) に沖縄県沖縄市で開催された。JavaScript や HTML といった Web 技術を用いセンサーやモーターの制御をハンズオン形式の講習会で実践的に学んだ。その後 5 週間の準備期間を経て、実際に IoT デバイスの作品づくりに挑戦する「ハッカソン」が行われ、6 チームが作品制作に励み最優秀賞を競い合った。沖縄では、2017 年より毎年開催され今回で 3 回目の開催となった。
基礎講習会
沖縄会場では、10 月 27 日にハンズオン講習会に先がけ基礎講習会として、講習で使用するマイコンボードや電子部品、オームの法則や電波の知識を含む電気・電子の基礎知識についての事前講座を南部会場にて実施。文系学生や社会人を中心に 19 名が参加した。
ハンズオン講習会
ハンズオン講習会では、主催者を代表し、総務省沖縄総合通信事務所 次長 渡邊 喜久 氏から激励のあいさつをいただき開会した。昨年度と同様、会場は、北部・南部の 2 か所で開催。受講者は、いずれかの会場を選び受講することができ、11 月 2 日 (土) 北部会場、11 月 3 日 (日) 南部会場には合計 27 名の文系大学、理系大学、高専、職業能力開発大学校ほか、中・高校生、社会人が参加した。
続いての座学講習では、一般社団法人 頑張る地域支援し隊代表理事 鈴木 邦治 氏による電波利用を含む「IoT 開発の基礎知識」を学んだ。昼食をはさみ、後半の体験講習では各参加者に Raspberry Pi 3B+ と CHIRIMEN for Raspberry Pi の ブートイメージの入った SD カードやブレッドボード、LED ランプ、ジャンパー線やセンサー、抵抗器などがセットされているスターターキットが配布され、実際のセンサー制御などを体験した。
参加者の中には、初心者や経験者が混在しており、両者の進むペースや理解度に差が出てきてしまうことがしばしみられるが、今回は新たな試みとして参加者が主体的となって参加するアクティブラーニングのスタイルを導入。その結果、参加者同士で教え合うことで全員に理解が深まった。体験講習では L チカ (LED チカチカの略) をはじめ、チュートリアルに従ってセンサー制御に黙々と取り組み講座が終了した。
講習会の最後には、今回のハッカソンテーマ「沖縄の観光に役立つもの」を発表。講師の沖縄職業能力開発大学校 特任能開教授 石川 功 氏が開発した 合同会社やんばる急行バスの「バスロケーションシステム」を実例として、開発背景 (問題発見) から現場での工夫や実装するまでの過程をお話しいただいた。参加者は、ハッカソンまでの今後のイメージをしながら聞けたのではないだろうか。
ハッカソン
2019 年 12 月 7 日 (土) - 8 日 (日)、10 月に実施したハンズオン講習会の成果イベントとして、沖縄市の沖縄職業能力開発大学校 (沖縄ポリテクカレッジ) にてハッカソンを開催した。今年度のハッカソンテーマは「沖縄の観光に役立つもの」と題し、参加 6 チームが 2 日間で作品制作を行った。ハッカソン 2 日間の日程は非常にタイトなスケジュールで、実質 14 時間で作品制作を行う。2 日目の午後には審査会が行われ、審査員が各チームのテーブルを周り審査する方法で各チームは審査員にデモを実演し、開発目的などについてプレゼンテーション行う。
制作する作品は、「ハッカソン当日に電子回路等組み立ての作業を行うこと / Raspberry Pi を用いた講習で学んだ知識に基づいた創作物であること / 無線を活用して、ネットワークサービスの連携もしくはネットワークからのコントロールが可能なこと / Web 技術を活用したシステムであること」などの条件をクリアした作品で、審査は「課題テーマに即しているか / ソフトウェア・ハードウェアの実装力 / アイデアの創造性・ユースケースの有用性 / Web・無線の活用度」の 4 点を評価する。
【ハッカソン 1 日目】会場には前回の講習から 5 週間の準備期間を経てメンバーが集結。各チーム準備してきた材料を持参し、スタートと同時に役割分担作業に集中している姿が会場のあちらこちらで見受けられた。初日は各チームとも余裕のペースで作業を進め、ブレイクタイム中もメンバー間での会話が絶えることなく、もくもくと作業を行い 18 時に終了。
【ハッカソン 2 日目】早いチームでは午前中に作品がカタチになり始めてきたが、終了 2 時間前、会場スクリーンにカウントダウン表示されると各チームの動きも慌ただしく、作品を仕上げる作業と同時進行で午後の審査会に向けた作品情報シートの提出や精算作業を行った。
15 時、事務局のアナウンスと共に審査会が開始され、審査委員長の杉野 勲 氏 (沖縄総合通信事務所長) ほか委員として、ロバート・ケプキー 氏 (在沖米国総領事館総領事)、白井 勝也 氏 (沖縄県商工労働部 情報産業振興課 班長)、盛田 光尚 氏 (一般財団法人沖縄 IT イノベーション戦略センター)、新藤 一彦 氏 (大阪大学 共創機構 産業共創本部人材育成部門長) の 5 名が務めた。各チーム 5 分間で作品のデモストレーションと説明を行い、5 分の質疑応答を行った。
全チームのプレゼンテーション終了後に別室にて審査員による公平公正に協議が行われ、17 時より表彰式、記念撮影、懇親会を行った。審査では、「高級高機能ハブ捕獲機」と「遠隔地の植物管理システム」が同点で双方ともセンサーを複数使用し技術的にも優劣つけがたく、テーマにどちらが即しているか審査会で討議されたところ、社会人 5 名で参加した F チーム「KOZA DOJO」の作品「高級高機能ハブ捕獲器」が最優秀賞を受賞。また、沖縄運営委員会 鈴木主査からは、C チーム「TAMAKI .Lab (改)」の作品「遠隔地の植物管理システム」、E チーム「安里ゼミの一番弟子」の作品「観光設置カメラ」の 2 チームに「グッドで賞」が授与され、会場は賑やかな雰囲気となった。その後の懇親会は、参加者、スタッフや協力大学の先生方を交え、和やかな交流を楽しむ姿が見受けられる時間となった。
参加チームおよび作品概要
Team A 伝説のうまっち
作品名:沖縄における首里城・識名園等の世界遺産を守る防災・防犯システムの構築
温湿度センサーや煙センサーなどによって、火災を検知、人感センサーと敷地侵入検知部によって防犯するシステム。Web サイトでログを確認でき、1 時間ごとに LINE で温度と湿度を通知する。煙を検知したら、IoT 技術を駆使して、リアルタイムでユーザーに LINE で通知をしたり、スピーカーから警報を出したりして火災の発生を伝える。
Team B MEMEs
作品名:美ら海まもる君
多くの人が訪れる沖縄の海での死亡事故を防止する作品。ラズパイにボタンと GPS をつけたモジュールをベルトで遊泳客に装着。遊泳時に動けなくなった際など、身の危険を感じた時にモジュールの SOS ボタンを押すと陸上のライフセーバーに警告音と共にボタンを押した場所の位置情報が送信され、ライフセーバーがいち早く救助に向かうことができる。人間の目では見落としてしまうような事故も防ぐことが可能。
Team C TAMAKI.Lab (改)
作品名:遠隔地の植物管理システム
作物の生育状況やその周りの環境情報を Raspberry Pi に取り付けたセンサーを用いてデータ化して収集・解析を行い、それに応じたフィードバックを遠隔地からリアルタイムに行うことを目的とした作品。フィードバックの具体的な内容は、成長度合いに応じた散水・灌水または LED 光量の制御。これにより作物の安定した生産性を実現でき、安価での提供、ひいてはその作物の普及推進が期待できると考えている。
Team D えだ豆ファクトリ
作品名:GPS を用いた民間タクシー
観光地にマップでピン立てて、近くの車に乗って別の観光地に移動。法的に営業できないと言われてしまえばそれまでだが、オーバーツーリズムが進む沖縄を特別区にして、実験的に運用することができれば実験データも取れ、これからの発展に繋がると考え本作品の制作を行った。
Team E 安里ゼミ一番弟子
作品名:観光設置カメラ
沖縄の観光名所や撮影スポットの建物自体や人が通れない箇所に定点カメラをつけることで、スマホからでは撮影できない位置や場所の良さを最大限に活かした写真を Raspberry Pi や無線の送受信を使い撮影することができるようにする作品。撮った写真を SNS アカウントからオンライン掲載することができれば、観光地のさらなる PR にもつなげることができると考えた。
Team F KOZA DOJO
作品名:高級高機能ハブ捕獲器 【最優秀賞受賞作品】
ハブ捕獲器の IoT 化。超音波センサーやカメラを設置し、侵入してきたハブを感知し、カメラで撮影。遠方にいる人へ情報を発信し、ハブ捕獲状況を知らせる高機能なハブ捕獲器。また、ネズミの動きや熱等を Raspberry Pi から発生させる疑似マウスを設置することで、クリーンなハブトラップにする。