Web×IoT メイカーズチャレンジ 2019-20 in 群馬 開催報告
2019 年 9 月 22 日 (日) - 23 日 (月・祝) にハンズオン講習会、2019 年 10 月 13 日 (日) – 14 日 (月・祝) にハッカソンと、計 4 日間の日程で「Web×IoT メイカーズチャレンジ 2019-20 in 群馬」が群馬県前橋市にて開催された。過去 2 回の開催では、Web × IoT メイカーズチャレンジ in 前橋として開催してきたが、今年度よりイベント名を「in 群馬」と改め、群馬県全体に本イベントを広げるべイベントを行った。今回は、台風 19 号の影響で急遽ハッカソン開催直前に開催日程と会場が変更となるハプニングがあったが、最終的に 6 組 23 名がハッカソンに参加した。
ハンズオン講習会
2019 年 9 月 22 日 (日) - 23 日 (月・祝)、群馬県前橋市 上毛新聞社にて Web×IoT メイカーズチャレンジ in 群馬が開催され、群馬県内外から高校生から専門学校生、高専生、大学生、社会人を含む 29 名が受講した。
群馬県では過去 2 回にわたり「Web×IoT メイカーズチャレンジ in 前橋」として本イベントの開催を行ってきたが、3 回目の開催となる今年度は、「Web×IoT メイカーズチャレンジ in 群馬」とイベント名も新たに、前橋市以外の県内の教育機関や企業、自治体が主催の運営委員会に参画するかたちで企画・実施を行った。
主催者の総務省関東総合通信局 情報通信連携推進課 箭内 美恵氏 と Web × IoT メイカーズチャレンジ 群馬運営委員会の主査である共愛学園前橋国際大学教授の 小柏 伸夫氏による挨拶で始まった 1 日目。
まずは座学講習として前橋市 政策部情報政策担当部長の松田 圭太氏による IoT 基礎知識講座が開催された。電波や無線通信の仕組み、利用方法などについてスライドを用いた分かりやすい説明がされ、参加者たちは興味深そうに傾聴していた。
続いて、KDDI 株式会社の宮崎 典行氏によるハンズオン講習が開始された。
各参加者には Raspberry Pi やモニターやキーボード等の機材に加えて今回の講習の教材環境である CHIRIMEN for Raspberry Pi 3 のチュートリアルで使用する microSD カードやブレッドボード、ジャンパー線や LED、各種センサー等がセットになったスターターキットが配布された。
用意されたチュートリアルに従って JavaScript によるセンサーやモーター制御の知見を身につけていく参加者たち。会場には過去の本イベント開催時に参加経験のある群馬大学のプログラミングサークルのメンバーや地元のオープンソースコミュニティのメンバーなどもアシスタントとして技術的サポートを行うメンターやチューターとして受講者のサポートにあたったが、どの参加者も飲み込みが早く、1 日目終了の時点で LED を点滅させるプログラムを製作したり、モーターを動かしたりしている参加者も多く見られた。
2 日目、9 月 23 日 (月・祝) の午前中は 1 日目に引き続き講習が行われた。
どのテーブルを見ても皆真剣かつ意欲的に取り組んでおり、モーターや LED に加え加速度センサーなどのより高度なプログラミングに挑戦する参加者もいた。
最後にあらためて今回の実習で使用した Raspberry Pi や micro:bit の無線通信規格の補足説明があり、実機を用いたハンズオン講習の時間が終了した。
午後からは、後日開催されるハッカソンに向けてのチーム分けが発表された。各チーム 4 名のメンバーで 6 組 が結成され、群馬大学教育学部 准教授 青木 悠樹氏によるアイデアワークショップがスタート。
やや緊張した面持ちの参加者たちに対し、自らを動物に例えて自己紹介をさせるなどユニークな交流を行い、チームメンバー同士親睦を深めあった。
その後、各チームには付箋とボードが配布され、思いついたアイデアを次々とボードに貼っていくブレインストーミングが行われた。
それぞれが群馬県を良くするためのアイデアを出し合い、そこにどう IoT を活かすのかを突き詰めていく。最後に、それぞれのチームから作品についての進捗が発表された。3 週間後のハッカソンに向けての課題を再確認し、ハンズオンは終了となった。
ハッカソン
2019 年 10 月 14 日 (日) - 15 日 (月・祝)、前述のハンズオン講習会から約 3 週間の期間を経て、群馬大学荒牧キャンパス 教育学部 N 棟にてハッカソンが開催された。
本来は 12 日から上毛新聞社での開催予定だったが、超大型の台風 19 号の到来により急遽日程の延期および会場の変更が行われた。河川の氾濫や公共交通機関の運休などで残念ながら参加が叶わなかった参加者もいたが、それでも参加者のほとんどは各々の作品を完成させるべく会場に集い、最後まで活気の溢れるイベントとなった。
大学生や社会人の参加者が多いなか高校生も開発に参加する姿が多く、世代の差を取り払ったコミュニティを形成しお互いに意見を言い合うなど、意欲的にものづくりに取り組む姿がどのチームにも見受けられた。今回の参加者による作品は群馬県にちなんだ作品が多く、その土地ならではの特徴や問題点を洗い出し制作に挑む姿が散見された。
今回のハッカソンはハードウェアを含め 1 からの制作となるため、各チームには 25,000 円までを上限とした材料費を主催者負担とした他、1 チームにつき 1 台の Raspberry Pi 3 B+ が配布された。各チームは 3 週間の準備期間中に Slack や LINE で連絡を取り合い、ソフトウェアの開発や機材の調達、組み立てを進めていく。それぞれが互いに協力しあい作品の完成に歩を進めた。
また、会場には技術的なサポートを必要とするチームのためにハードウェア及びソフトウェアの開発に詳しいメンターやチューターが配備されており、状況に応じたアドバイスをしたり参加者と共にキーボードを叩く姿がしばしば見られた。
日程変更によりハッカソン最終日の参加ができない 2 チームのみ、初日の最後に成果発表を行ったが、2 日目にはどのチームも作品の最終調整に入った。プログラムが想定通りに動かないチームもあったが、少ない残り時間を最大限活かそうと団結し人事を尽くした。
午後からは各チームの成果発表および表彰作品の審査が行われた。ハッカソンの審査員は、群馬県 企画部 情報政策課 課長 山口 和也 氏、前橋市政策部 情報政策担当部長 松田 圭太 氏、上毛新聞社 事業局次長 兼 事業部長 富田 充慶 氏、株式会社クライム 代表取締役 金井 修 氏、そして Web×IoT メイカーズチャレンジ実行委員会主査の KDDI 株式会社の高木 悟氏の 5 名が担当した。
「ハンズオン講習会で学んだ Web GPIO API または Web I2C API を使った作品であること」や、「ネットワークサービスの連携もしくはネットワークからのコントロールが可能なこと」、「Web 技術を活用したシステムであること」、「ハードウェア (モノ) をともなった作品であること」といった条件のもとで制作された各チームの作品は、デモを交えた 5 分間のアピールタイムでそれぞれの作品の特徴や利点、苦労した点などが披露され、審査員からの質疑応答を行った上での審査となった。
審査の結果、最優秀賞はチーム B の「移動式害獣検知マシン」が受賞。群馬県における農業の重要さ、ひいては実用性・需要の高さや搭載された技術の豊富さなどが評価された。また、C チーム (力あわせた 4 人の群馬 C チーム) の「上毛かるた専用自動集計マシン」にも特別賞が授与され、各入賞チームメンバーには、株式会社クライムより最新版の Raspberry Pi 4 が副賞として後日進呈されることとなり目録が授与された。
その後、主催者である総務省 関東総合通信局 情報通信連携推進課長の望月 俊晴氏の挨拶とともに懇親会が始まった。講師陣や審査員を含め参加者たちは終始和気あいあいとした雰囲気で談笑したり、お互いの作品について語り合ったりなど、笑顔が溢れる中でハッカソンは幕を閉じた。
参加チームおよび作品概要
Team A ICE
作品名:某高級 ICE 食べ頃教えるザマス
群馬県には世界で 3 ヶ所しかないアイスクリーム工場のうちの一つがあることから着想を得た、硬いアイスクリームの食べ頃を教えてくれるデバイス。冷凍庫から出したアイスクリームの表面温度を計測し、食べ頃の温度になったタイミングで LINE に通知を送信する。これによりアイスクリームの存在を忘れることなく、最高のタイミングで味わうことができる。
Team B チーム B
作品名:移動式害獣検知マシン 【最優秀賞受賞作品】
畑などに現れる害獣を光と音で追い払うことができるデバイス。リアルタイムでカメラによる動体検知を行っており、取得した画像を機械学習によってサルかそうでないかを判断し光と音で追い払う。キャタピラーとサーボモーターを搭載しており、Web サーバーを介した遠隔コントロールで自在に動き回って畑の全方位をカバーすることができる。また、CHIRIMEN の代替品として Python を採用しており、開発環境においてもこだわりが見られた。
Team C 力あわせた 4 人の群馬 C チーム
作品名:上毛かるた専用自動集計マシン 【特別賞受賞作品】
群馬県の郷土遊戯・上毛かるたにおける審判の負担を減らすことができるデバイス。あらかじめかるたの絵札に取り付けてある QR コードを Raspberry Pi のカメラで読み取り、誰がどの札を取ったのかを自動で集計してくれる。取った札は Google スプレッドシートに記入され、最終的に勝敗を判定し結果が LINE に転送される。団体戦における役札 (高得点の札) や同点の際の勝敗の判定も考慮されている他、同じ QR コードを重複して読み取らせてしまってもカウントしないようになっているなど、審判が不在でも気軽にかるたが遊べる工夫が施されている。
Team D 優太班
作品名:それいけ! ぐんまちゃん!
群馬県はメンバーの出身地である茨城県よりも暑く感じるという所からアイデアを発展させた、ユーザーに納涼感を与えるデバイス。周囲の気温に応じて前方についているファンが起動し、音楽を流しながら正面に立った人間に追従して動き出す。また、測定した気温や時間をディスプレイに表示することで視覚的な情報も得ることができる。装飾としてぐんまちゃんのぬいぐるみやマントを用いることで親しみやすい見た目になっていることに加え、配線を隠す狙いもあるなどユーザビリティ的な視点での工夫もなされている。
Team E team Cone
作品名:動くコーン (キャタピラー搭載型)
道路での危険運転を抑制するためにキャタピラーでの移動を可能としたカラーコーン。距離センサーを搭載しており、周囲の車や障害物と一定の距離を空けて移動することで車間距離を確保するのが狙い。また、コーンが動作した際には LINE に通知が届く仕組みになっており、危険運転だけでなく高齢者の安否確認などにも迅速な対応を促すことができる。
Team F MadoShimeStudent
作品名:Climate-Weather Monitoring System
急な雨や焼畑の煙、大気汚染などを予測・観測し、自動で窓を閉めるモニタリングシステム。サーボモーターに繋がれたラジエーションシールドの中には温湿度や気圧、雨、埃など様々なセンサーに加え気象予報 API による雨雲の観測、加速度センサーによる風速の観測機能などが仕込まれており、Wi-Fi を介して Web アプリ上で確認することができる。アプリ側からも窓を閉めることができる他、観測結果が規定値を超えた場合はモーターが作動し自動で窓を閉め、所有者の LINE や Slack に通知が届く。