Web×IoT メイカーズチャレンジ 2019-20 in 札幌 開催報告
学生や若手エンジニアを対象とした IoT システム開発のスキルアップイベント「Web×IoT メイカーズチャレンジ 2019-20 in 札幌」が 2019 年 8 月 - 9 月に北海道札幌市で開催された。JavaScript や HTML といった Web 技術を使ったセンサーの制御を 2 日間のハンズオン形式の講習会で実践的に学び、その後、4 週間の準備期間を経て、実際に IoT デバイスの作品づくりに挑戦する「ハッカソン」が行われ、5 チームが作品制作に励み最優秀賞を競い合った。
ハンズオン講習会
2019 年 8 月 31 日 (土) - 9 月 1 日 (日) の両日、Web×IoT メイカーズチャレンジ 2019-2020 in 札幌のハンズオン講習会がビットスター株式会社 札幌本社にて開催された。本講習会は、Web 技術 (JavaScript 、HTML) を用いて、個別の組み込みデバイス特有の開発環境の習得なしにハードウェア (センサー) を制御する方法を学ぶこと、および電波や IoT の基礎となる知識を身に着けることを目的と実施された。
当日は 25 名が参加し、主催者である北海道総合通信局 情報通信部長 臼田 昇 氏からの開会の挨拶とともに講習会か始まった。最初のプログラムである北海道大学 特任教授 山本 強 氏による座学講習 (IoT/電波に関する基礎知識) では、多くの参加者が初めて聞く内容の様子で、皆真剣な面持ちで講師の話に耳を傾けていた。座学講習終了後は、有限会社サイレントシステムの 中本 伸一 氏による、ハンズオン講習が始まった。講師・チューターの自己紹介から始まり、IoT デバイス設計に必要な基礎概念や、プロトタイピング教材を使った LED の点灯、サーボモーターの稼働等、様々なチュートリアルが行われた。中本 氏のユーモアを交えた説明に時折笑いが起こるなど、参加者は楽しそうな様子で受講していた。
開催 2 日目。朝から昨日に引き続き講師のサイレントシステム 中本 伸一 氏によるハンズオン講習が行なわれた。2 日目は前日に学んだ技術を使った応用編で、参加者が自ら資料を見ながら主体的にハンズオンを進めた。
そして、ハンズオン終了後は、事務局からよりチーム発表が行なわれ、その後、さくらインターネット株式会社 北田 義孝 氏によるアイデアワークショップが行なわれた。アイデアの出し方や手法などの講義があり、その後各チームでの作品テーマ決定・具体的な検討を行い、2 日間のハンズオン講習会が終了した。
ハッカソン
2019 年 9 月 28 日 (土) - 29 日 (日) の 2 日間にわたり、ビットスター株式会社 札幌本社にてハッカソンが開催された。「身近な社会問題を IoT を活用し解決する」というテーマで各チームがものづくりに挑戦した。札幌地域のハッカソンでは、4 ~ 6 名からなる 5 チーム計 23 名が参加し、Raspberry Pi 3 B+ 等 CPU ボード、センサー、様々な工作物等を用いて作品の制作に臨んだ。
チームごとに 25,000 円を上限に作品の制作や開発にかかわる経費を主催者が負担し、各チームで必要な部材を調達するところから体験した。事務局によるオリエンテーション終了すると、各チームはただちに製作にとりかかった。
そしてハッカソン 2 日目。最終日のオリエンテーションが終了すると、各チームはただちに製作を再開。想定外のトラブルでチューターに助けを求めるチームもある一方、順調に製作を終え、一足先に審査発表に備え練習をするチームもあった。 2 日目は 16 時まで作品製作が行われ、その後全員参加での審査会が始まった。
審査員は北海道科学大学 三橋 龍一 氏、北海道総合通信局 田中 智大 氏、さくらインターネット株式会社 江草 氏の 3 名で、「ソフトウエア・ハードウエアの実装力」、「アイデアの独創性・ユースケースの有用性」、「無線の活用度」の 3 点を基準に審査が行われた。
審査員は事前に各チームの事前資料に目を通し、各テーブルを回り、チームからデモを交えた説明を受けた。一般的なデモではくユーモア溢れる寸劇を行ったチームもあり、バリエーション豊かな発表会となった。
審査会終了後は、参加者・関係者全員が集まり、懇親会が行われた。懇親会では、軽食や飲み物が用意され、参加者や審査員等、本イベント参加者の交流が行われ、終盤に審査結果が発表された。最優秀賞、技術賞、アイデア賞の順番で賞が発表され、各審査員からの講評とともに、受賞のパネル、トロフィーが渡された。
また、審査委員の計らいにより、審査会終了後に Web 賞、IoT 賞が追加された結果、すべてのチームが表彰を受けた。札幌においてはチーム MikuMikuLock! の作品「MikuMikuLock!」が最優秀賞を受賞した。
参加チームおよび作品概要
Team A MikuMikuLock!
作品名:MikuMikuLock! 【最優秀賞受賞作品】
メッセージングアプリ「Discord」または Web ブラウザーから自宅の鍵開閉が可能なスマートロック。ロック・アンロック時にはスピーカーから初音ミクの音声が再生されることで、おもてなしの心が演出される。スマホ等の端末から遠隔ロック・アンロックができることに加えて、オートロック機能、各種センサーによる不正開錠検知、動態検知を行うことができる。また、ユーザー操作やセンサー出力のイベントログをサーバーに集積させることも可能。
Team B 漆黒の聖剣
作品名:漆黒の聖剣
IoT を用いた寸劇を行った。聖剣とあるように、殺陣の場面があり、切られ役の血しぶきを、各登場人物の衣装や剣に仕込まれたテープ LED で表現した。テープ LED は Web サイト上で遠隔操作 (ON・OFF) ができるようになっており、場面に合わせて点灯させる演出をした。劇終盤には QR コードで観客に「GOOD エンディング・BAD エンディング」のどちらかを選択してもらえる観客参加型で作り上げた。
Team C スマートゴミ箱
作品名:Sunday
テーマは食品ロス。食品ロスというのは非常に大きな問題で、今世界全体の年間の食糧生産量約 40 億トンに対して食糧廃棄量は約 13 億トンで、日本の食糧廃棄量はアジアトップ。そんな大きな問題を、 IoT を用いて一人一人が意識して改善していけるようなごみ箱の作成に、チーム「Sunday」は取り組んだ。ゴミ箱に「重量センサー」・「超音波センサー」・「LED ドットマトリックス」を取りつけて生ごみの残量を表示し、生ごみの廃棄量を集計する。このごみ箱は、様々なデータを使用者に把握してもらうことでごみの減量を促すことを目的としている。
Team D +Professional
作品名:スマート自転車置場「チャリスマ!」
駐輪場の空き状況をスマートフォンなどで確認することができるスマート自転車置き場。駐輪データを活用することで、混雑時間の把握や放置自転車の問題を解決できる。機能としては、駐輪場が空いているかどうか、スマホなどから混在状況の確認ができるほか、駐輪データを収集し、取得したデータをスプレッドシートに出力、放置自転車対策や混雑時間を把握できる。
Team E ごった煮
作品名:SMART LIFE
北海道の農家さんや畑仕事をする方に向けたブラウザーで home や field の状態を管理できるシステム。多数のセンサーが設置され、家にいるときに畑の、外にいるときに家の状態がスマートフォンからわかるようになっている。